【ブックディレクション】
無印良品と公共図書館が一体となった世界初の施設「カニミライブ図書館」が岐阜県可児市に開館しました。無印良品の売場と図書館区画がシームレスに繋がり、買い物ついでに本を借りることができるユニークな空間です。(公共図書館は可児市が運営しています。)
ORDINARY BOOKSは、蔵書されている2万冊の選書(一部可児市)、分類計画、排架、インフォメーションサインと館内パンフレットの編集を担当しました。
この公共図書館は、可児市と無印良品を展開する株式会社良品計画が地域の活性化や課題解決に取り組むために締結した包括連携協定によって誕生しました。両者が掲げる思想を本で体現することを目標にしつつ、最も大事にしたのは「市民の方々にどうやって本を手に取ってもらい、どう読んでもらうか」ということです。本は飾りになってはいけないし、ここに本がある必然性をつくりだすことを目指しました。
以下7つの独自分類を設けて、それぞれのテーマにふさわしい本が置かれています。
「心と身体の声を聴く」
「日々を重ねる」
「こどもといっしょに育つ」
「自然の神秘を視る」
「過去・現在・未来を見渡す」
「感性をひらく」
「言葉と遊ぶ」
この分類は、あまねくジャンルの本を網羅することに優れたNDC(日本十進分類法)に依拠しながら、カニミライブ図書館独自のオリジナル分類です。オリジナル分類では、大テーマ・中テーマ・小テーマと3つの階層をつくり、大きなテーマ(総論)から小さなテーマ(各論)へと思考の樹形図をつくるように本棚を構成しました。これにより、興味のあるジャンルに対する知識の裾野を広げるとともに、その周縁にあるまだ知らない世界に触れてもらうきっかけをつくることができると考えました。NDCでは一か所に集約することができなかった本を、テーマに紐づけて集めて並べることを可能にすることで、普段図書館に足を運ばない方、本を読まない方に、本をもっと身近に感じてもらえるようにと願いを込めました。
丁寧に慎重に選書したつもりですが、選書に正解はありません。誰かにとっては「いい選書」だったとしても、一方の誰かにはいい選書じゃないかもしれない。万人に受け入れられる選書とは? そのことを念頭に置き、普段は選ばないような本も積極的に導入しました。どんな本棚になっているかはぜひ現地でご覧いただけると幸いです。
—施設概要—
可児市立カニミライブ図書館
開業日:2023年11月23日
運営:可児市
開館時間:10:00~20:00
所在地:〒509-0203 岐阜県可児市下恵土5750 無印良品ヨシヅヤ可児店内
クライアント:岐阜県可児市、良品計画
空間設計:良品計画
分類計画、選書、排架、サイン/パンフレット編集、什器ディレクション:
ORDINARY BOOKS(三條陽平、森山知子、荒川依知)
アートディレクション&デザイン:芝野健太(LIVE ART BOOKS)
テーマサインアートワーク:佐貫絢郁
撮影:稲口俊太