【ブックディレクション】
六本木ヒルズ49階にある会員制ライブラリー「アカデミーヒルズ」にて、ブックデザインに関する展示を企画しました。
-tittle-
フィジカルな紙の魅力を再考する
ブックデザイン・アーカイヴス
https://www.academyhills.com/note/report/2023/2304entrance.html
-statement-
19世紀末イギリスの芸術家・思想家のウィリアム・モリスは、かつてこのような言葉を遺しています。
最も重要な芸術を問われたなら「美しい家」と答えよう、その次に重要なのは「美しい書物」と答えよう―――。
美しい書物とは何なのでしょうか。
それについて考えることは、いつも何気なく手に取っている「本」という存在を違う視点から捉え直す試みになるのではないか。そのような想いから本展は企画されました。
改めて1冊の本を紐解いてみると、実に多様な人、想い、過程が、紙の束に凝縮されていることがわかります。本づくりの工程には、企画、執筆、撮影、編集など様々なプロセスが存在し、素材(紙)の選択、印刷・製本の方法と表現、タイポグラフィや組版の検討など、著者や編集者に加えて、印刷所やデザイナーの手を介し、本としてのかたちが与えられます。作者の逡巡と膨大な量のやりとりを経て、ようやく読者の手元に届くのです。
こうして生み出された紙の本には、風合い、インクの匂い、頁を操る触感、擦れる音といった電子書籍では決して味わえないフィジカルな魅力が宿っています。この五感に資する身体性があるからこそ、人は紙の本を手離せないのではないでしょうか。フィジカルな魅力を最大化させる大きな要因となる「優れたブックデザイン」とは、明確な企画意図を持って、内容(コンテンツ)と形態(デザイン)が一致したもの、と定義できるかもしれません。ここに展示する30冊はその好例です。これらが刊行されたのは、電子書籍元年といわれる2010年前後。1つのディケイドに焦点を当てることで、この時代のブックデザインシーンを俯瞰することを目的としました。
本展で近年のブックデザインを総覧することは到底叶いませんが、出版不況といわれて久しい現代になぜ紙の本を出版するのか。その視座を見つけていただけたら幸いです。
-overview-
期間:2023年4月〜6月
場所:六本木ヒルズ49階 アカデミーヒルズ(エントランス・ショーケース)
企画:工藤眞平(合同会社SPBS)
三條陽平(ORDINARY BOOKS)、西山萌(編集者)
会場グラフィック:加納大輔(グラフィックデザイナー)
撮影:丹羽惠太朗(写真家)